三菱スペースジェットの大失敗
〜 「型式証明」を取得する三つの要諦 〜
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新たに開発した民間航空機を商用運航するには、航空機製造国の航空当局による「型式証明」を取得することが必要不可欠です。
米国で開発したホンダジェットは、開発プロジェクトの開始から18年後の2015年に、米連邦航空局から型式証明を取得して事業化に成功しました。
我が国で開発しようとした三菱スペースジェットは、開発プロジェクトの開始から12年後の2015年に、試験機の初飛行に成功したのですが、それから7年経っても型式証明を取得することができず、2023年に開発が中止され事業化に失敗しました。
そこで講演では、事業化の成否を分けた型式証明の取得に向けた取り組み方について分析して、以下の3点が、航空機開発プロジェクトにおいて「型式証明」を取得する上での3つの要諦であることを説明します。
① 開発プロジェクトの企画段階における、ニーズとシーズのベストマッチング
② 開発プロジェクトの実施段階における、トップダウンによる全体最適化
③ 型式証明の取得段階における、性能発注方式の考え方と取り組み方
ちなみに、ホンダジェットは3つの要諦全てに成功したのですが、三菱スペースジェットは3つの要諦全てに失敗したと言えます。
1 ホンダジェットと三菱スペースジェット 〜 明暗を分けた「型式証明」
1-1 ホンダジェットと三菱スペースジェット、それぞれの経緯
1-2 型式証明とは? 〜 型式証明を取得するには
2 三菱スペースジェットの大失敗
2-1 初飛行後7年経っても、型式証明取得の目処が立たなかった三菱スペースジェット
2-2 三菱スペースジェット、20年間の軌跡
2-3 三菱スペースジェット、失敗の根源
2-4 経済産業省が新たに策定した「航空機産業戦略」
3 ホンダジェットの大成功
3-1 開発プロジェクトの正式開始から18年後に型式証明を取得したホンダジェット
3-2 ホンダジェットが型式証明を取得するまでの29年間の軌跡
3-3 ホンダジェットが成功した要因
3-4 ホンダジェットの変遷・進化と、次世代上位クラス機「ホンダジェット エシュロン」
欧米では、米国Joby Aviation社のJoby S4(推力偏向型でパイロットを含めた5人乗り、最高速度は約320km/hで航続距離は約240km)が先行しており、米連邦航空局の型式証明取得に向けた5段階の審査プロセスでの4段階目に進んでいます。
我が国では、SkyDrive社のSD-05(マルチコプター型でパイロットを含めた3人乗り、最高速度は約100km/hで航続距離は約15km)の型式証明申請が、2021年10月に国土交通省航空局に受理されていますが、2023年6月に大幅な仕様変更が発表されています。
また、我が国での型式証明の審査プロセスで用いる耐空性審査要領は、米連邦航空規則(現在、推力偏向型のJoby S4で審査プロセスが進行中)に追随・準拠してきたところですが、マルチコプター型での審査プロセスを米連邦航空規則から読み取ることは難しい状況です。
それゆえ、大幅な仕様変更を繰り返した挙げ句に型式証明の取得に失敗した三菱スペースジェットの二の舞にならないようにするには、米国における型式証明審査プロセスの本質を良く理解して、【 1 講演のはじめに 】で述べた「型式証明」を取得する上での3つの要諦を全て成功させるように取り組んでいくことが肝要と言えます。
他方、米連邦航空局からホンダジェットの型式証明を取得した実績を有するホンダは、開発・実用化を目指す空飛ぶクルマであるホンダeVTOL(リフトクルーズ型でパイロットを含めた5人乗り、航続距離は約400kmが目標)についても、子会社のホンダリサーチインスティテュートを米国で設立して、ホンダeVTOLの製造国を米国とすることにより、米連邦航空局からの型式証明の取得を目指しています。
2024年10月に米連邦航空局は、ホンダeVTOLのサブスケールモデルの試験飛行を許可していますので、ホンダジェットと同様に、ホンダeVTOLの開発・実用化も着々と進展していると言えます。
講演資料は、下記のクリックでご覧頂けます。
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