【 講演の趣旨 】
このような東電福島第一原発事故の大きな教訓は、南海トラフ巨大地震発生に伴う人的・物的被害の軽減対策に反映させて活かしていくことが大事です。つまり、大規模災害対策の要諦として、事前対応のプロセスとしてのリスクマネジメントを周到に実施しておくことと、事後対応のプロセスとしてのダメージコントロールを臨機応変かつ的確に実施できる体制を整えておくことが大事なのです。この観点から、東京都は、東部5区に広がる海抜ゼロメートル地帯における水害対策施設について、東日本大震災を契機とする周到なリスクマネジメントを実施していますので、これを踏まえた実効的なダメージコントロールが実施できる体制を整えておくことが何よりも望まれるところです。
ここで、リスクマネジメントについてですが、リスクを組織的に管理し、想定される被害や損失の低減を図る事前対応のプロセスとして、概念や用語、手法も明確であり、多方面で広く実施されています。他方、ダメージコントロールについてですが、被害が実際に発生した際に臨機応変に被害拡大防止を図る事後対応のプロセスであることから、手法の普遍化は困難であり、概念や用語も明確であるとは言えません。このため、実効的なダメージコントロールの実現に向けて、事前に準備を整える動きもほとんど見られないところです。
それゆえ、事前の周到なリスクマネジメントが奏功して、臨機応変かつ的確なダメージコントロールにより数多の重大なトラブルを全て克服し、奇跡の生還を遂げた小惑星探査機「初代はやぶさ」に、改めて目を向けるべきではないでしょうか。「初代はやぶさの奇跡の生還」は、事前対応としてのリスクマネジメントと、事後対応としてのダメージコントロールとの間の関係性や取り組み方について、大いに参考にすべき類稀な事例と言えるからです。
【 講演の目次内容 】
2 ダメージコントロールの顕著な成功事例 〜 小惑星探査機「初代はやぶさ」の奇跡の生還
3 ダメージコントロールに大失敗した東京電力福島第一原子力発電所事故
4 東京都の海抜ゼロメートル地帯における水害対策の概要
5 東日本大震災を契機として、東京都が実施したリスクマネジメント
6 東京都が実施したリスクマネジメントで残された課題
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【講演のタイトル】
大規模災害のリスクマネジメントとダメージコントロール
【講演の要旨】
我が国では、大きな事故や災害が発生するリスクを低減するため、リスクマネジメントを「組織対応」で行います。しかし、リスクマネジメントを徹底しても、リスクをゼロにすることは困難です。そこで、大きな事故や災害が実際に発生した際には、ダメージコントロール、つまり、迅速かつ的確な被害の拡大防止措置の実施が極めて重要となります。ところが、ダメージコントロールは、ボトムアップによる部分最適化を旨とする「組織対応」による取り組みでは上手く機能しないため、トップダウンにより全体最適化を図る取り組み体制の事前構築が欠かせません。このことについて、東京電力福島第一原子力発電所事故と、東京都の東部5区に広がる海抜ゼロメートル地帯における水害対策を取り上げて、具体的に説明します。
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【講演のタイトル】
大規模災害のリスクマネジメントとダメージコントロール
【講演の目次】
Ⅰ リスクマネジメントとは? ダメージコントロールとは?
Ⅱ 東京電力福島第一原子力発電所事故
〜 大規模災害発生時のダメージコントロールに大失敗 〜
Ⅲ 東京都の水害対策
〜 東部に広がる海抜ゼロメートル地帯への対策 〜
Ⅳ ダメージコントロールの成功に欠かせない、トップダウンによる全体最適化
〜 「組織対応」では実現できない性能発注方式の取組み方 〜
Ⅴ 仕様発注方式では回避できない、発注者の責任
〜 地下調節池整備工事に伴う周辺地盤不同沈下被害の責任は、発注に先立つリスク
マネジメントの不備にあるとされた事例 〜
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