ライフワークは、

 

性能発注方式の啓蒙と普及

 

 

 

 技術士(電気電子部門)の

  澤田雅之です。

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〈 澤田雅之のプロフィール物語 〉

【生地・学歴・職歴】

1953年 愛知県生まれ

1976年 京都大学工学部電気工学科卒業

1978年 京都大学(院)工学研究科電気工学専攻修士課程を修了し、同年、警察情報通信部門の技官として警察庁に入庁。その後、35年間にわたって、警察庁の課長補佐・調査官・室長、警察情報通信研究センターの研究室長、警察情報通信学校の教養部長、管区警察局県情報通信部長(宮崎、茨城、宮城、福岡、愛知、神奈川)などを歴任

2013年 警察大学校警察情報通信研究センター所長を退職。同年、株式会社セキュリティ工学研究所に入社し、その後、2年間にわたって企業等へのコンサルティングに従事

2015年 技術士資格(電気電子部門)を取得して、澤田雅之技術士事務所を開業

 

 

【性能発注方式についての経験と実績】

 1996年当時の九州管区警察局宮崎県情報通信部長として、「宮崎県警察本部ヘリコプターTVシステム整備事業」を、我が国では戦後初となる性能発注方式で完遂しました。設計・製造・施工・検査の全てを規定する要求水準書は、外部委託せずに約1ヶ月で作成できました。

 2001年〜2011年に情報通信部長(発注の元締めである工事請負契約書上の「甲」です。)として勤務した茨城、宮城、福岡、愛知、神奈川の各県警察では、前記の宮崎で体得した性能発注方式についての知見に基づいて、建築・土木工事を含む数百件の警察情報通信施設整備事業の全てを性能発注方式で完遂しました。この際、入札不成立案件や一者応札案件は皆無でした。また、このような性能発注方式による発注に対して、会計検査院の会計実地検査を4回受検しましたが、どの検査においても、「適正に経理されている」旨の講評を受けています。さらに、人事異動で赴任した際に仕様発注方式(設計・施工分離発注方式)で入札不成立となっていた幾つもの発注案件を、直ちに性能発注方式(設計・施工一括発注方式)に切り替えることにより、短期間で契約締結に至った経験と実績もあります。

 2014年には、JICAのODAによる手配犯顔画像検知システムの整備に向けて、性能発注方式の取り組み方による整備計画書と要求水準書の作成指導を行いました。

 2015年には、伊勢志摩G7サミットで用いる警戒監視システムの整備に向けて、性能発注方式の取り組み方による要求水準書の作成指導を行いました。

 

【性能発注方式の啓蒙と普及に向けて】

 2015年に澤田雅之技術士事務所を開業した後は、今日に至るまで、性能発注方式の啓蒙と普及をライフワークとして取り組んできました。前記のとおり、私は1996年から2011年にかけて、宮崎、茨城、宮城、福岡、愛知、神奈川の各県警察で数百件の発注案件を性能発注方式で執り行い、一度の失敗も無く全て成功させましたが、このような経験と実績を有する者は、国内では私の他には誰もいないと思います。それゆえ、このような経験と実績に基づく知見、つまり、大中小規模の多種多様な整備事業を性能発注方式により的確かつ効率的に遂行する具体的方策についての知見を、社会に幅広く還元していくための活動に全力で取り組んできたのです。

 性能発注方式の啓蒙と普及に向けた取り組みの二本柱は、講演活動と執筆活動です。

 講演活動については、これまで、国土交通省、地方自治体、大学、民間団体、セミナー会社等で、百回を超える講演を行いました。

 執筆活動については、これまで、日本技術士会が発行する月刊『技術士』や、警察政策学会が発行する『警察政策』などに論説を寄稿してきました。また、数十年来のライフワークとして取り組んできた「性能発注方式」を集大成した書籍【「性能発注方式」発注書制作活用実践法】を執筆して、2022年9月に(株)新技術開発センターから出版(https://www.techno-con.co.jp/item/3163.html)されました。この書籍は、これまでのところ、「性能発注方式」を真正面から取り扱った国内唯一の書籍です。さらに、2024年夏の出版に向けて、新書籍【包括的民間委託など、自治体が性能発注方式を的確かつ簡便に実践する方法】を、目下、執筆しているところです。

 

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**部分最適化から全体最適化へ**

〜大規模技術プロジェクトを破綻させない鍵〜

 我が国ではこれまで、優れたシステムを実現する方法論として、『システムを構成する各部分ごとに最適化を図れば、最適化された各部分を纏め上げた全体が最適化される。』とする考え方が主流であったように思います。

 

 技術革新が緩やかに進む中で、既に確立された技術を用いてシステムを構成する場合には、部分最適化の積み上げが確かに全体最適化に繋がっていました。既に確立された技術は規格化や標準化がなされていることが多いので、システムを構成する各部分ごとの最適化が容易であり、また、各部分を他の部分とベストマッチングさせて全体を最適化することも難しくはないからです。

 

 しかし、技術革新が急激に進む中で、最先端技術を用いてシステムを構成する場合には、このようなボトムアップでは全体最適化には繋がりません。最先端技術は規格化や標準化がなされていないことが多いので、システムを構成する各部分ごとに最適化ができたとしても、各部分を他の部分とベストマッチングさせることが容易ではないからです。そこで、実現したいシステムの目的を見据えたトップダウンにより、全体最適化を図ることが極めて重要となってきます。

 

 ボトムアップからトップダウンへの変革は、システムの実現を目指すプロジェクトの運営体制を抜本的に見直すことが大前提となります。ボトムアップでは、プロジェクトを構成する各グループごとに最善を尽くすことが求められます。この場合には、グループを率いる各リーダーは、プロジェクトの責任を互いに分かち合う立場であり、各々の専門分野の技術力に加えて、グループとしての結果を出すための統率・指導力及び折衝・調整力が欠かせません。一方、トップダウンでは、プロジェクトの成否は偏にプロジェクトリーダーの手腕に掛かってきます。この場合には、プロジェクトリーダーは、プロジェクトの最終責任を一身に負う立場となるため、システムの全般に関する技術力に加えて、優れた企画力、折衝・調整力及び統率・指導力が求められます。

 トップダウンでプロジェクトを運営することは、欧米では通例となっていますが、我が国では、戦前の軍用機開発プロジェクトが典型的なトップダウンでした。例えば、零戦については、三菱重工の堀越二郎技師が設計主務者として、零戦開発プロジェクトを率いました。零戦の成功は、堀越二郎技師の卓越した技術力、企画力、折衝・調整力及び統率・指導力の賜物であったと言えます。

 

 数年来、新国立競技場の建設問題や、線天文衛星「ひとみ」が軌道上で空中分解した問題など、大規模な技術プロジェクトの破綻が続発していますが、いずれも発注者のエンジニアリングの視点で捉えてみますと、根源には共通する問題点(全体最適化のコンセプトではなく部分最適化のコンセプトを追求したことです。)が浮かんできます。例えば、新国立競技場では、プロジェクトをデザイン設計・建築設計・建築施工の三段階に分割して、各段階ごとに競争原理を働かせようとする部分最適化を追求していたと捉えることができます。また、線天文衛星「ひとみ」では、トップダウンにより全体最適化を図るプロジェクトリーダーが実質的に不在となる中で、受注企業三社を取り込んだ形でプロジェクトを運営していたため、各社それぞれが責任を持ってそれぞれの最善を尽くそうとする部分最適化を追求していたと捉えることができます。

 

 このことから、全体最適化のコンセプトを追求することは、これからの我が国における大規模な技術プロジェクトを成功に導く上での必須条件であると言えます。また、全体最適化のコンセプトを機能させるには、プロジェクトリーダーが最終責任を全うできるよう、強力な権限の付与を必要としますので、この点について、プロジェクト構成員の意識改革を徹底することも必須条件であると言えます。

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  ドローンテロへの対策  ☆☆

 重要警戒エリアの遥か彼方から

精密に無線誘導されて飛来した

大型のドローンが

夜の闇に紛れて

要所・要人目掛けて突入・・・

これは正に、警備実施上の悪夢です。

しかし、近年の無線技術の進歩発展は

ドローンの脅威を著しく増大し

このような悪夢が現実化しています。

 

また、空の産業革命を担うドローンは

手足の代わりに羽根が生えた

空飛ぶロボットです。

電波妨害で操縦不能に陥れても

墜落しません。

ドローンテロ対策が難しい所以です。

* カウンタードローンの技術・運用の現状と将来展望 *

**  三菱総研 カウンタードローン・ウェビナーで講演  **

2020年12月16日(水)に開催された【三菱総研カウンタードローン・ウェビナー】では、私は、3人の講演者の2番目に、「カウンタードローンの技術・運用の現状と将来展望」のテーマで登壇しました。

 

他の講演者のテーマは、中村裕子氏(東京大学 スカイフロンティア社会連携講座特任准教授)による「国内のドローンサービスの発展と高まる違法ドローンの脅威」と、Robert Tabbara氏(米国カウンタードローン企業 911 SecurityのCEO)による「米国におけるドローンの検知・撃退システムの最新事例」でした。

 

講演資料はこちらです。

* ドローンテロ対策の最前線〜大規模警備の視点から *

電気評論9月号(2019)の「イベントを支える様々な技術」に掲載された、約1万字の記事で

 

 警戒エリアの遥か彼方から、精密に無線誘導されて飛来したドローンが、夜の闇に紛れて要所・要人目掛けて突入。これは正に、警備実施上の悪夢です。しかし、近年の無線技術の進歩発展は、ドローンによるテロ攻撃の脅威を著しく増大し、このような悪夢を現実化しています。

 そこで、昨年の韓国平昌オリンピック・パラリンピックや英国ロイヤルウェディングでは、ドローンテロを防ぐため、飛来をレーダーで探知して、突入を電波妨害で阻止するなどの対策を講じています。また、昨年暮には英国のガトウィック国際空港に複数のドローンが昼夜にわたって侵入を繰り返したため、空港が2日間近く閉鎖される事案が発生しましたが、この際には、英国陸軍が保有する守備範囲が数kmに及ぶドローン対策機器を空港に投入して、ドローンの侵入を阻止しています。

 わが国ではこれから来年にかけて、ラグビーワールドカップ、天皇陛下即位の礼正殿の儀とパレード、オリンピック・パラリンピック東京大会など、大規模イベントが予定されています。いずれも、ドローンテロ対策が欠かせないため、大規模警備の視点から、その最前線を紹介します。                   

*  テロ敢行手段としてのドローンの脅威と対処方策  *

警察政策学会の年刊誌「警察政策」第20巻(2018)に掲載された、約2万字の論説です。

 

 2018年平昌冬季オリンピックでは、ドローンによるテロ攻撃に備えて、競技会場周辺におけるドローンの飛行を禁止するとともに、警察のテロ対策部隊にドローン警備隊を組織し、ドローン捕獲ドローン、携帯型ジャマー、ショットガンを配備しました。

  2019年のG20サミットやラグビーW杯、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、本論説が我が国のドローン対策の一助となれば幸甚です。

 

下記は、論説の全文です。

                                              

* * *  ドローンが担う “空の産業革命  * * *

〜 空飛ぶロボットへの進化とセキュリティなドローン社会の実現 〜

月刊「技術士」1月号(2020年)

に掲載された論説記事です。 

 

Society5.0における“空の産業革命”の担い手として、ドローンは、“無線による操り人形”から“自律型の“空飛ぶロボット”に進化していきます。その先には、都市の上空(つまり、第三者の頭上)を、進化したドローンが飛び交う時代が到来します。その大前提として、ドローンによる事故が発生しないよう、また、発生した場合でも人身の安全を確保できるよう、そして、ルールに従わないドローンの発見や取締りが効果的にできるよう、セキュリティを幅広く確保しなければなりません。これには、AI・5G・MR(複合現実)・準天頂衛星システム「みちびき」等の最先端技術を活用したイノベーションが不可欠となります。           

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** みちびきとセキュアなドローン社会の実現 **

「SPACシンポジウム2019」に

 講師として登壇しました。 

 

 一般財団法人衛星測位利用推進センター(SPAC)が、2019年11月29日(金)に日本科学未来館で開催した「SPACシンポジウム2019」で、「みちびきとセキュアなドローン社会の実現」を講演しました。これからの「ドローンによる空の産業革命」に向けて、レベル3(無人地帯における補助者無しの目視外飛行)、および、レベル4(第三者上空における補助者無しの目視外飛行)を広く展開していくには、5Gによる「コネクテッド・ドローン」、AIと3次元センサーによる「空飛ぶロボット」、“みちびき”の高精度測位が産み出す「精緻な空のハイウェイ」の実現が欠かせないことをアピールしました。下記は、講演資料です。

       

***「みちびき」が拓く未来  ***

〜 ドローンテロ対策の視点から 〜

「SPACシンポジウム2018」に

 講師として登壇しました。 

 

 一般財団法人衛星測位利用推進センター(SPAC)が、11月16日に東京お台場の日本科学未来館で開催した「SPACシンポジウム2018」に、講師として登壇しました。私の講演テーマは、【「みちびき」が拓く未来 〜 ドローンテロ対策の視点から】です。

 ドローンは、準天頂衛星システム「みちびき」の本格稼働(2018年11月)や、IOT基盤としての5Gの実現(2020年頃)などの無線技術の進歩発展に支えられて、小型無人機としての「空の産業革命」や、有人機としての「空の移動革命」に向けて、急速に進化していきます。

  そこで講演では、このようなドローンによるテロ攻撃の脅威の増大と、そのような脅威への対処方策について、わかりやすく解説しました。下記は、講演資料です。

             

* ドローンでわかる電気自動車・自動運転車・空飛ぶ車 *

月刊「技術士」6月号(2018年)

に掲載された解説記事です。 

 

 リチウムポリマー電池でモーターを駆動して飛行するドローンは、リチウムイオン電池でモーターを駆動して走行する電気自動車と同じく、CO2を排出しませんが航続距離は短いです。また、搭載したセンサーデータをフライトコントローラーで処理することにより各モーターの回転数を最適制御するドローンは、自動運転車と同じく、操縦のアシストや、完全自律航行ができます。さらに、ドローンが進化し大型化すれば、人が搭乗できる空飛ぶ車となります。

 そこで、ドローンの飛行制御の仕組みを踏まえて、電気自動車・自動運転車・空飛ぶ車それぞれの仕組みや特徴、今後の動向について解説しました。下記は、解説記事全文と講演資料です。

                            

** 明日の社会(Society5.0)にかける夢 **

〜 ドローン・電気自動車・自動運転車・空飛ぶクルマ 〜

 明日の社会( Society5.0、つまり、超スマート社会 )は、弱者に優しい社会です。

 準天頂衛星システム「みちびき」の高精度測位や、AI、IOT、5Gに支えられ、ドローンが進化した「空飛ぶロボット」や「空飛ぶクルマ」、あるいは、完全自動運転車などが、高齢者、身体障害者、過疎地に住む人々の手足となって助けてくれます。

          

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☆☆☆   顔画像識別技術 ☆☆☆

我が国の顔画像識別技術は、世界一です。

その識別精度と識別速度は

「人の目」を遥かに凌駕しています。

顔の表情や経年変化、整形手術や変装など

「人の目」には全く別人に映ったとしても

顔画像識別技術では看破できます。

 

 監視カメラのライブ映像から

テロリストを発見したり

防犯カメラの録画映像から

犯人の身元を割り出したり。

夢のような話ですが

顔画像識別技術は既に実用の域なのです。

 

 問題は

監視カメラや防犯カメラの映像品質です。

顔画像識別技術の性能を存分に引き出すには

顔画像識別技術の特性にマッチした

撮影システムの構築が欠かせないのです。

* AIで飛躍的に進化する顔画像識別技術 *

警察政策学会が2021年3月に発行した『警察政策第23巻』に掲載された、28ページの論説『AIで飛躍的に進化する顔画像識別技術』です。

 

【要旨】

 今世紀初頭に実用化が始まった顔画像識別技術は、近年ではAI(ニューラルネットワークのディープラーニング)の活用により識別の精度や速度が飛躍的に向上し、「人の目」を遥かに凌駕する驚異的な識別性能の実現に至っている。

 

 例えば、顔の長期経年変化、あるいは、顔の表情や撮影角度の大きな違いなどが影響して、「人の目」には別人としか見えない顔画像であったとしても、数百万人分の中から本人の顔画像を高精度かつ瞬時に選択することができる。また、低解像度や低コントラストなどの低品質顔画像に対する識別精度についても、大幅な改善が見られる。このような識別性能の向上は、警察における被疑者写真検索や指名手配犯の発見にも大いに資するところである。

 

 そこで、米国立標準技術研究所が実施しているFace Recognition Vender Testの結果等に基づき、社会の多方面における実用化が進展している顔画像識別技術について、その最先端の機能・性能を論説する。

 

論説の全文は、下記のクリックでご覧頂けます。

          

  顔画像識別技術に関する特許を取得しました。*

 

 発明の名称】   

同一人物映像に対する顔画像間欠切出し

制御機構を用いたターゲット発見システム

 

監視カメラが捉えたライブ映像の中からテロリストや指名手配犯の顔を自動的かつリアルタイムに発見するターゲット発見システムにおいて、リアルタイム性を損なうことなく、他人誤認率を極めて低く抑えた上で本人発見率を高める仕組みを発明しました。

 

 詳細は、特許公報(以下のURL)をご覧下さい。

  http://www.conceptsengine.com/patent/grant/0006376403

 

 

*  顔の識別における機械の目の特性と人の目の特性  *

〜 犯罪捜査やテロ対策の視点から 〜

 顔画像識別エンジンを用いた「機械の目」は、識別の精度と速度において「人の目」を遥かに凌駕しています。また、顔の表情や経年変化、整形手術などにより「人の目」には別人の印象を与える場合であっても、「機械の目」は印象の違いに左右されずに識別できるなどの優れた特性があります。このような「機械の目」は、防犯カメラの録画映像に遺留された犯人の身元割り出しや、監視カメラのライブ映像で捉えた指名手配犯やテロリストの発見に、効果的に活用することができます。

 一方、「人の目」は、意識レベルでは顔の際立った特徴や印象を一瞬で捉えることができます。また、無意識レベルでは、思い出せなくても目撃した顔には反応する特性があります。前者の意識レベルの特性は、「目撃者の供述に基づく犯人の似顔絵」として、また、後者の無意識レベルの特性は、「目撃者の被疑者写真閲覧による犯人の割り出し」として、犯罪捜査に活用されています。

                    

**  警察情報通信の発注者エンジニアリング ** 

〜 ターゲット発見システムの実現に向けて 〜 

警察政策学会の年刊誌「警察政策」第19巻

(2017)に掲載された論説です。

 

 ターゲット発見システムは、顔画像識別技術を活用して、監視カメラのライブ映像の中からテロリストや指名手配犯を即座に発見するシステムです。技術的な困難さから、これまで効果的な実現事例は皆無でしたが、近年の技術革新の進展により、技術的な困難さは既に克服されています。

 このため、費用対効果に優れたシステムの実現に向けて残された課題は、価格と技術の両面での競争原理が確実に働く理想的な発注仕様書を作ることです。発注者ならではの技術的な手腕を発揮して、理想的な発注仕様書を作ること・・・これが『発注者エンジニアリング』です。

                   

* 顔画像識別技術と監視カメラが産み出す「機械の目」の特性 

月刊「技術士」3月号(2016年)に掲載された解説記事です。

 

 我が国の顔画像識別技術は、世界のトップランナーです。その識別精度と識別速度は「人の目」を遥かに凌駕しています。このため、防犯カメラの録画映像からの犯人の身元割り出しや、監視カメラのライブ映像からの指名手配犯の発見は、既に実用の域に達しています。

 ここで問題となるのが、防犯カメラや監視カメラの映像品質です。顔画像識別技術の優れた性能を存分に引き出すには、その技術的な特性に適合した撮影システムの構築が欠かせません。そこで、顔画像識別技術の性能や特性、満たすべき映像品質について、具体例に基づき解説しました。

        

*   顔画像識別における人の目の特性と機械の目の特性   *

警察政策学会の年刊誌「警察政策」

第17巻 (2015)に掲載された論説です。

 

 顔画像識別エンジンを用いた「機械の目」は、識別の精度と速度において「人の目」を遥かに凌駕しています。また、顔の表情や経年変化、整形手術などにより「人の目」には別人の印象を与える場合であっても、「機械の目」は印象の違いに左右されずに識別できるなどの優れた特性があります。

 一方、「人の目」は、意識レベルでは顔の際立った特徴や印象を一瞬で捉えることができます。また、無意識レベルでは、思い出せなくても目撃した顔には反応する特性があります。

 そこで、「人の目の特性」と「機械の目の特性」をわかりやすく解説することにより、顔画像識別技術の犯罪捜査への効果的活用方策を提言しました。

               

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☆☆   発注者のエンジニアリング  ☆☆

発注者のエンジニアリングとは

費用対効果に優れた調達の実現に向けて

発注者ならではの

技術的な手腕を発揮することです。

その要諦は

価格面だけではなく技術面においても

競争原理を確実に働かせることができる

“性能発注”の実現です。

この鍵を握るのは

ニーズとシーズをベストマッチングする

理想的な「要求水準書」の作成です。

ニーズとは

発注者が実現を求める機能と性能です。

シーズとは

受注者が持つ設計と製造のノウハウです。

理想的な「要求水準書」を作成すれば

工事や製造請負などの発注業務は

あらゆる点で劇的に改善します。

それ故

理想的な「要求水準書」に基づく“性能発注”が

我が国で

幅広く速やかに普及することが望まれます。

* * *  性能発注のお薦め  * * *

〜公共工事発注上の諸問題を解決する鍵〜

 

【公民連携Dチャンネルで講演】

 

 2021年1月27日に開催された第18回公民連携Dチャンネル(大和リース株式会社主催、国土交通省後援)のセミナー講師として登壇し、プレゼン資料【 性能発注のお薦め 〜 公共工事発注上の諸問題を解決する鍵 】に基づき、講演しました。

 

 

プレゼンに用いた資料はこちらです。

         

* * *  公共事業における性能発注  * * *

〜 技術士が「公益確保の責務」を果たす切札 〜

 

月刊「技術士」10月号(2020年)

に掲載された論説記事です。 

 

「仕様発注」に失敗して白紙撤回された新国立競技場整備事業は、「性能発注」で蘇り当初予定どおりに完了しました。このように「性能発注」は、公共事業に伴う難題を抜本的に解決していく切札となるものです。それゆえ、監理技術者として公共事業に参画する技術士は、「性能発注」の特徴や利点を理解してその活用を図ることにより、これからの公共事業を支えていくことが肝要です。「公益確保の責務」を負う技術士は、公共事業における「性能発注」により、「談合の防止」や「費用対効果の最大化」など、大きな社会貢献もできます。

        

リニア中央新幹線工事の受注調整

新国立競技場整備計画の白紙撤回

〜 根底には「価格面のみを追求した仕様発注」〜

 *「性能発注」に関する勉強会 *

 

「性能発注」に関する勉強会(代表は、青山俊樹 元国土交通省事務次官)は、我が国の公共工事で定着している「仕様発注」の課題を解決するため、「性能発注」の先進モデルの検討を通じて、受注者の創意工夫と最先端技術を存分に活かすことによる費用対効果に優れた公共工事の実現を、狙いどころとしています。

そこで、勉強会での検討材料として、【 リニア中央新幹線工事の受注調整・新国立競技場整備計画の白紙撤回 〜 根底には「価格面のみを追求した仕様発注」】と題するプレゼン資料を、2020年3月に作成しました。ところが、新型コロナウィルスの影響により一堂に集う勉強会が開催できなくなったため、勉強会の事務局では、約50名の勉強会メンバーにこのプレゼン資料をメールで配布し、メールで意見や議論を交わす形で勉強会を継続しているところです。

              

* * * “性能発注”のお薦め * * *

〜 公共工事発注上の諸問題全てを解決する鍵 〜

 

【第21回Smart Wellness City首長研究会で講演】

 

2019年11月19日に、第21回Smart Wellness City首長研究会(会長は、新潟県見附市長)が、筑波大学東京キャンパスで開催されました。私は、会長からのご依頼により、【“性能発注”のお薦め 〜 公共工事発注上の諸問題全てを解決する鍵】を講演しました。参加者は約200名で、その内の首長は約30名でした。

【 講演要旨 】

 公共事業の発注では、設計と施工を別々に発注する“仕様発注”から、設計と施工をまとめて発注する“性能発注”に流れが移りつつあります。PFI法に基づくDBO方式(公設民営)及びBTO方式(民設民営)の場合や、公設公営におけるデザインビルド方式の場合には、“性能発注”の他にございません。“性能発注”を成功させる鍵は、価格と技術の両面での競争原理が確実に働く「業務要求水準書」を作成することです。見附市の「浄水場整備運営事業」と「清掃工場整備運営事業」は、“真の性能発注”を実現した、全国のモデルとすべき事業と言えます。

         

* * * “性能発注”のお薦め * * *

〜 公共工事発注上の諸問題全てを解決する鍵 〜

 

【国土交通省にご説明】

 

自由民主党衆議院議員 薗浦健太郎先生の第一秘書の佐藤尚志様のご尽力により、2019年12月3日、国土交通省の土地・建設産業局 建設業課 入札制度企画指導室と大臣官房 技術調査課 建設技術調整室に対して、文部科学省認可技術士協同組合 公共工事発注問題研究会の藤田泰正 技術士(機械部門・総合技術監理部門)と共に、【“性能発注”のお薦め 〜 公共工事発注上の諸問題全てを解決する鍵】に基づき、ご説明致しました。

         

* X線天文衛星「ひとみ」の失敗は「発注者のエンジニアリング」の失敗 *

 X線天文衛星「ひとみ」は、米国航空宇宙局や欧州宇宙機関等も参加した一大国際プロジェクトでした。平成28年2月17日の打ち上げに成功しましたが、3月26日、観測機器の試験運用中に、衛星の姿勢測定系のバグによりゆっくりと回転を始め、次いで、姿勢変更系のデータ入力ミスにより回転を猛烈に加速したため、遠心力で「ひとみ」は空中分解し、失われました。一大国際プロジェクトは、大成功を目前にして水泡と化したのです。

 原因を深堀りしてみますと、適切な発注者エンジニアリングの欠如(衛星メーカーに実現を求める機能要件と性能要件を、性能仕様書として、つまり、要求水準書として、的確にまとめ上げて発注することができなかった。)による全体最適化の失敗が、根本かつ最大の原因であったと思います。

 そこで、「ひとみ」が空中分解した直接的な原因や背景要因を分析することにより、発注者エンジニアリングの視点から、大規模な技術プロジェクトを破綻させないための要諦を具体的に解説しました。

                                 

『零戦』をモデル事例として、『オープンイノベーションを成功させる発注者のエンジニアリング』の要点をご説明する動画です。

Posted by 澤田雅之技術士事務所 on 2016年2月17日

* ニーズとシーズをベストにマッチング *

 〜 オープンイノベーションを成功させる鍵 〜

 発注者のエンジニアリングとは、耳慣れない言葉だと思いますが、技術革新が著しい分野でオープンイノベーションにより優れた特注品を創り出したいときに、目覚ましい効果が期待できる手法です。

 

 これまでに無い画期的な特注品を創り出そうとすれば、発注者側のニーズとベンダー側のシーズをベストマッチングさせなければなりません。ここでのニーズとは、発注者が特注品に求めたい機能と性能です。また、ここでのシーズとは、ベンダーが保有している詳細設計と製造のノウハウです。

 

 しかし、ベンダーにはそれぞれ得手と不得手がありますし、技術革新が急激に進む中では、得手と不得手が短期間に入れ替わることも稀ではありません。このような状況下であればこそ、発注者のエンジニアリングを適切に行って、求めたい特注品の設計と製造に最適なベンダーを見つけ出す必要があります。

 

 この手法の鍵を握っているのは、発注仕様書です。技術革新が緩やかに進む分野では、これまでの発注経験を活かして発注者が詳細設計を行い、それを発注仕様書としてまとめるのは難しくはないと思います。ところが、技術革新が急激に進む分野では話が全く違ってきます。発注者が詳細設計を行うには、最新技術の動向調査から始めなければならないからです。しかし、これは決して容易なことではありません。そこで登場するのが、オープンイノベーションです。し烈な技術革新の成果を速やかに存分に享受したいのであれば、研究開発も含めた詳細設計を広く外部に求めるオープンイノベーションが非常に効果的です。

 

 オープンイノベーションの発注仕様書では、詳細設計は致しません。その代わりに、発注者が特注品に求めたい機能要件と性能要件について、ベンダーが詳細設計を行うために欠かせない情報を、分かりやすく発注仕様書に記載します。ここで、性能要件は具体的な数値で示す必要があります。この数値目標の達成に向けて、ベンダーは特注品の詳細設計を行います。このため、性能要件間のトレードオフ関係を十分に検討して、達成が容易ではないけれども決して不可能ではないぎりぎりの数値を設定することが、理想的な発注仕様書を作成するための要諦となります。

 

 理想的な発注仕様書では、価格と技術の両面での競争原理が働くようになります。このような発注仕様書を提示してベンダーを広く募れば、発注者は、求めたい特注品の設計と製造に最適なベンダーを容易に見つけ出せることでしょう。

 まとめますと、発注者のエンジニアリングとは、技術革新が著しい分野でオープンイノベーションにより優れた特注品を創り出すために、価格と技術の両面での競争原理が確実に働く理想的な発注仕様書を作成することだと言えます。ここで大事なポイントは、次の三点です。

 

 一つ目は、ベンダーが詳細設計を行うために欠かせない機能要件及び性能要件を、漏れ無く発注仕様書にリストアップすることです。この際に、性能要件間のトレードオフ関係について十分に検討して、実現が決して不可能ではないように要件定義をしなければなりません。

 

 二つ目ですが、発注仕様書では、ベンダーに委ねる詳細設計には踏み込まないことです。踏み込んでしまいますと、ベンダーが行う詳細設計の自由度を狭めてしまいますし、性能要件の達成責任の所在が曖昧となる恐れが生じます。

 

 三つ目は、発注仕様書の作成に先立って、概要設計書を作成して発注者側の意志統一を図ることです。概要設計書には、解決しようとする課題、技術的な課題解決方策の概要、課題解決により期待される効果、の三点を分かり易い文章で記載することが大事です。

 

 ところで、既にお気付きのことと思いますが、理想的な発注仕様書を作成するには、発注者ならではの目利き力が欠かせません。この目利き力を具体的に申しますと、最新技術で解決できる現場の課題を見極める力と、課題解決により期待される効果を的確に予見する力です。このような力量の発揮が、発注者のエンジニアリングを成功に導きます。

 

 発注者ならではの目利き力は、発注者エンジニアリング力と言い換えることもできますが、これは、ベンダーが保有する詳細設計と製造のための技術力とは全く次元が異なるものです。ところが、我が国ではこれまで、発注者エンジニアリング力の意義や重要性、涵養と発揮の仕方について、全くと言って良いほどに注意を払ってきませんでした。

 

 しかし、情報通信分野などの技術革新は、益々激しさを増しているところです。これからは、我が国のベンダー企業群が産み出す優れた技術的成果を、オープンイノベーションにより速やかに存分に享受できた者が勝ち組となることでしょう。発注者エンジニアリング力の涵養と発揮が、ビジネスにおける勝敗の鍵を握る時代となりつつあります。

 


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所長の略歴
昭和287月生
昭和533月 京都大学()工学研究科修士課程修了
昭和534月 警察庁入庁。以来35年間、警察の情報通信部門で技術者として勤務し、顔識別技
      術の警察活動への応用に向けた調査・研究や、警察の各種情報通信システム整備に
      伴う発注者エンジニアリング業務(概要設計書や技術仕様書の作成)に従事。
平成253月 警察情報通信研究センター所長を最後に、警察庁を退職。
平成257月 ()セキュリティ工学研究所に入社。以来2年間、警察やメーカー、警備保障会社
      などへの、顔識別技術に関するコンサルティング業務及び発注者エンジニアリング
      業務(概要設計書や技術仕様書の作成)に従事。
平成273月 技術士事務所を開業